脱ステなんてしなくてもアトピーを治せる理由

アトピーではない人にとっては普通に「何で?」と思えることが、長い間アトピー生活を続けていると、そんな風には思えなくなってしまう事がいくつかある。そのひとつがいわゆる「脱ステ」で、 アトピー患者の中にはこの「脱ステ」をしない限り、アトピーを治せないと思ってる人が結構いる。 結論から言うと、「脱ステ」をしようがしまいが、アトピーは治る時は治るし、治らない時は治らない。これが私の直接経験だ。

ステロイドの呪縛

私の場合を例に話そう。あれは高校一年の夏だった。風呂上りに首が痒くなった。今までなら痒みなんて何もしなくても勝手に消えていたのだが、この時は様子が少し違っていた。入浴後になると決まったように痒みがやってきて、テレビを観ている私の邪魔をする。薬箱の中にあった市販の薬を塗っても効かなかった。で、翌日、皮膚科に行った。

医者はアトピーとも何とも言わず、丸い容器に入った塗り薬を処方してくれた。その夜、さっそく使ってみた。 入浴後、痒くなった首の周辺に塗ると瞬く間に痒みは消えた。「やっぱ薬だ」と思った。なんの疑問も不安もない。と言うか、当の私は自分の使っている薬がステロイドだと言うことさえ知らなかった。 後は単純、痒くなれば薬を塗る、痒くなければ何もしない。これだけだった。

元々はステロイドを使って症状をコントロールする筈だった。いや、コントロールではなくあわよくば「治る」ことを期待してステロイドは処方されたに違いない。事実、一時的であれ症状は良くなった。この時、生活習慣の見直しをしていれば、アトピーは消えていたと思う。ところが高校生の私にはそんなことは分からない。一昨年に母を亡くしたばかりなのだ。食生活なんて滅茶苦茶。症状はどんどん悪化した、その都度、処方される塗り薬の種類が変わった。

ステロイドを使って症状をコントロールする筈が、気が付けば自分がアトピーにコントロールされる側になっていた。どこへ行くにもステロイドを持参。ステロイドが無ければ外泊さえできない。そんな毎日が続いた。そして90年代の初め、あのステロイドバッシングが幕を開けた。マスコミによるステロイド叩き、とにわけニュースステーションでの報道は衝撃的だった。 程度の差はあれ、当時多くのアトピー患者が不安に陥った筈だ。「こんなにアトピーが悪化したのはステロイドの悪い毒が蓄積されてしまったから!」「ステロイドを止めない限りアトピーは治せない!」当時、私もステロイドを使った罪悪感で一杯だった。

その後、このステロイドバッシングを機に脱ステを強行した結果、強烈なリバウンドを食らうことになる。収拾がつかない血と膿の世界に突入した挙句、やむなく会社を休職。もう仕事どころの状態ではなかった。そしてこの時、既に辞令が出ていた栄転の話は白紙となった。

健康な人がステロイドを塗り続けると?

いきなりで恐縮だが、①風邪を引いていない人が風邪薬を飲めばどうなるだろう?②アトピーでない健康な人がステロイドを塗り続ければどうなるのだろう?①の場合、私の経験では、何も問題はなかった。体が少し熱く感じたり眠くなったりしたものの、それも時間が経てば消えた。では2の場合は?健康な人が、来る日も来る日もステロイドを顔に塗り続けるとどうなる?で、そろそろ副作用が出始める頃かな?と思うタイミングで一気にステロイドを止める。するとこの健康な人の顔はどうなる?

信じ難い話だが、日本には過去、これと似た例があった。昭和40年代後半、ステロイドを下地に塗ると化粧のノリが良くなると言う理由で、多くの女性がステロイド入りの化粧品を使用していたのだ。 ところが微量でも毎日ステロイドを顔に塗り続けると、当然、時間の経過と共に副作用は出る。その結果、ステロイド皮膚症で顔が真っ赤になり、多くの女性達がパニックに陥った。で、当時、これは社会問題となった。ではその後この事件はどうなったのか?結論から言うと、この事件はほどなく鎮静化した。原因が判明した時点で、女性達がこの化粧品の使用を止めたからだ。

脱ステで副作用は消える。でもアトピーはそのまま

薬の投与を中止すれば、副作用は時間の経過と共に消える。元々、彼女達にアトピーはないので、ステロイドを止めれば皮膚は元に戻る。当然、リバウンドはおきない。ところが、これと同じことをアトピー患者が試みればどうだろう?かなり危険である。なぜなら、これまでステロイドで抑えられていた症状が爆発的に悪化するリスクと、薬の長期投与による副作用のリスクを一挙に背負うことになるから。また副作用のリスクが無くても、アトピー自体が良くなる理由はどこにも見出せない。ステロイドはアトピーと診断されたから使用した訳で、そのステロイドを止めれば元のアトピーに戻るだけ。それだけの話なのだ。

このように見てゆくと、脱ステそのものが割に合わない行為のような思われる。実、脱ステなんてしなくても、健康を取り戻せばステロイドは要らなくなってしまう。これは、先ほどのステロイド入りの化粧品を使っていた女性達と同じ理由だ。従ってステロイドは「離脱したら治る」ではなく「治れば離脱できる」が正解となり、これが私の経験則だ。

深刻なのはアトピーよりもリバウンド

脱ステによるリバウンドの被害は本当に深刻だ。「息子が不登校に」「寝たきりの状態から引きこもりに」正直な話、アトピーそのものよりリバウンドによる被害の方が私には深刻に思える。この事実を把握せず、安易に脱ステを奨める民間療法には注意が必要だ。「一緒に頑張ろう!」 「ステロイドの悪い毒を出し切ればアトピーは治る!」ひと昔前のように、脱ステだけを全面に出す民間療法は見なくなった。一気にステロイドを抜く療法は、一見克服までのシナリオが描けているようで、実態は単にステロイドを抜くだけのケースが大半なように思う。

私は、ステロイドは一気に抜かなくても根本治療で自然に必要なくなると思う。ステロイドを一気に抜いたからと言って、アトピーが治る理由(保証)はどこにもないのだから、最初から治ることがわかっている方法で安全かつ確実に完治を目指す方がよいと思う。その方法については「大人のアトピー治療:治し方&治り方のすべて」を参照して欲しい。